CHEF'S JOURNEY
シェフの産地めぐり

福岡県視察

2019年04月26日

地元でありながら、これまで知らなかった魅力にあふれる食材が豊富な福岡県。視察に行くたびに自分たちの住む福岡県が食材の豊かな大変恵まれた土地柄であることを改めて思い知らされます。これまで3回に渡って実施した福岡県の食材視察の中から、既にTHE MARKET Fで使用している食材や、特に印象に残っている食材を紹介いたします。


博多和牛

博多和牛は福岡県内の博多和牛生産者として登録された42名の牛肉のプロが丹精込めて育てた和牛です。福岡県内産の新鮮な稲わらと牛専用のお米を食べて育ち、その堆肥を水田に戻すことにより良質な稲わらと米が実り、それをまた牛が食べる循環型農業を実現しているそうです。濃厚な旨みがありながらも脂身は癖が無くさっぱりとしていて、フレンチのソースとの相性も抜群なので、大変気に入っています。THE MARKET Fでは博多和牛の旨みを最大限に引き出すチャコールグリルで香ばしくグリルして提供しています。地元・福岡県の和牛の美味しさを是非、一度味わっていただきたいです。



久保田農園

久保田農園さんは糸島市と大分市にある自社農園で、珍しい西洋野菜やハーブ、葉物野菜のほか、ベビーリーフよりも小さなプチリーフなども栽培されています。その数なんと、約100種類。これまでもTHE MARKET Fでは付け合わせとして、また、バーではカクテルに使うミントやハーブなど、久保田農園さんのものを使用していましたが、農園を訪ねたのは今回が初めてです。様々なハーブの良い香りが漂うハウスで、数多くの野菜やハーブを見せていただきました。注文当日に収穫・出荷を基本とされており、収穫も人の手で丁寧に。「お客様が欲しいサイズのものを提供できるように」、と、同じ種類でも小さなものから成長したものまで、様々な成長段階のものが並んでいました。品質の高さはもちろん、ユーザー目線のきめ細やかなサービスを提供している点が、多くの料理人から支持される所以であると感じました。



とよみつひめ

福岡のブランドイチジク「とよみつひめ」を見せていただいたのは、Natural Farm ~Forest~の森さんの農園。収穫の時期を迎える2ヶ月ほど前にお邪魔しましたので、果実はまだ小さな青い状態でしたが、旬の時期になるとルビー色の鮮やかな皮と果肉に変化します。「とよみつひめ」は非常に糖度の高いイチジクで、最も高いものでは22~23度にもなるそう(通常は18度程度)。皮が柔らかく皮ごと食べられること、また、完熟しても割れにくく日持ちがするのも特徴とのこと。とろけるような滑らかな食感と芳醇な香り、そして、甘くミルキーな味わいが魅力の「とよみつひめ」は、デザートはもちろん、実はグリル料理にも相性がいいのです。イチジクの時期になると、THE MARKET Fのグリル料理にも付け合せとしてお出しすることがあります。




博多すぎたけ

天然ものは春と秋にしか採れない珍しさとその美味しさから「幻のきのこ」と言われる「ヌメリスギタケ」を改良して生まれた「博多すぎたけ」。私はこのきのこの存在を知らなかったのですが、九州で唯一栽培・販売をしている「農事組合法人ドリームマッシュ」の理事・廣松さんにご紹介いただきました。福岡県農林業総合試験場資源活用研究センターの協力を得て、野生の品種から味覚と品質に優れた優良品種の施設栽培に成功したそうです。なめこのようなぬめり感のある傘とエリンギのようなシャキシャキした食感の茎が特徴。野性味溢れる力強い味わいで、非常に面白い食材だと感じました。年間出荷量が少ないため、量販店にはほとんど並んでいない貴重且つ高級なきのこです。



香月菜園のケールとロメインレタス

久留米市にある香月菜園さんでは、ケール、ロメインレタス、パクチーを見せていただきました。大きなブロッコリーのようなルックスのケールは、青汁の味のイメージを覆す驚きの美味しさ。縮れた肉厚の葉はバリっとした食感も面白く、甘みが強くとにかく美味しい。皆さんにケールの本当の美味しさを是非味わっていただきたいので、そのままサラダとして提供するのもいいな、と考えています。そして、太陽の光をたっぷり浴びて元気に育った大きなロメインレタスは白い茎の部分の甘さとジューシーさに感動。こんなに力強い味のロメインレタスを食べたのは初めてでした。平成30年7月豪雨の際には浸水被害で作物が全滅したという香月菜園さん。明るく元気な香月さんの笑顔の裏に、大変な思いをされたはずであることを思えば、食材に真摯に向き合わないわけにはいきません。愛情と手間暇をかけて大切に育ててくださっている生産者の皆さんへの尊敬と感謝の念を新たにした視察となりました。



川茸(スイゼンジノリ)

今回の視察で知ったもう一つの食材が「川茸(学名:スイゼンジノリ)」。この川茸、なんと世界でもここ福岡県朝倉市の黄金川でしか収穫されない高級天然淡水ノリだそうです。宝暦十三年(1763年)から川茸を専売してきた「遠藤金川堂」の十七代目・遠藤さんに案内していただきました。鮮やかな美しい緑色とプルプルとした独特の食感が魅力の川茸は、秋月藩から江戸幕府への献上品だったとのこと。「遠藤金川堂」は秋月藩からの専売の許可を得、現在も伝統的な製法を守りながら栽培を続けていらっしゃいます。環境の変化により水量や水温が変化し、収穫量は最盛期の20分の1ほどにまで落ち込んだそうで、環境省のレッドリストの絶滅1A類に該当する、大変貴重な食材です。川茸が育つための美しい環境と水質を守り、生産量を増やしていくために、地域住民の皆さんや小中高校生たちと一緒に様々な取り組みをしているとおっしゃっていました。2017年の九州北部豪雨の際にはほとんどの川茸が流されてしまったとのこと。僅かに残った川茸を大切に育て、翌年4月にようやく出荷できるようになったそうです。この豪雨の際に遠藤さんが感じたであろう長い歴史を誇る老舗であることの責任と、世界で唯一スイゼンジノリが自生できる場所であるという重み。そして、復興までの努力を想像すると、本当に頭が下がります。こんなに素晴らしい食材を残していただいたことに対して、福岡県民として感謝の念に耐えません。収穫は3月から7月くらいまで。4、5月が旬だそうです。店舗でも生の川茸や川茸入り刺し身こんにゃくなども販売されていらっしゃいますので、お近くに行かれる際にはぜひ、皆さんも足を運んでみてください。



はかた地どり

THE MARKET Fのグリル料理や前菜などに使用している福岡のブランド地鶏「はかた地どり」。博多の郷土料理である水炊きやがめ煮を美味しく味わうための鶏肉として開発された「はかた地どり」は、旨味成分であるイノシン酸が豊富で、コクと旨味が強く、肉質がきめ細やかなのが特徴です。鶏肉には「ブロイラー」やエサや飼い方を工夫した「銘柄鶏」などがありますが、なかでも「地鶏」は国内産鶏肉生産量の約1%しかない特別なもの。「在来種の血液率が50%以上」、「出荷日齢80日以上」、「28日齢以降は1㎡あたり10羽以下で平飼い」の条件を満たしたものだけが「地鶏」と名乗ることができます。今回の視察では「はかた地どり」を一括して処理している工場にお邪魔させていただきましたが、驚くほど徹底した衛生管理のもと丁寧な作業が行われておりました。

 

 

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